好きな人がいること
とても尊敬している上司が、恋人を連れてきた。「結婚式に来てほしい人たちには紹介したい」と、そんなうれしい言葉に心を弾ませながら、少しだけヤキモチを焼いた。
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私にも、今すぐ人に自慢したくなるくらい大好きな人がいる。
私は女で、その人は男。
これまでの長い年月、私は2つの性別がどうして分かれて存在するのか、ずっとよくわからなかった。そんな人間とは何かを問うような問いの答えも、いつか結婚したいと思える人ができると、その意味が急によくわかるようになる。
私「どうしてカップルはみんなキスをするの?気持ち悪くない?恥ずかしくないの?」
母「いつか、そういうことをしたくなる時が来るのよ。不思議とね。」
上司の、いままで見たことのないような幸せそうな姿を見ていたら、ふといつかの自分と母との会話を思い出した。
ドラマを見ながら、なにも考えていなかったころの私が聞いた質問に、目を画面から離さず答えた母の姿が懐かしい。小学校の頃だっただろうか。
あれから、私もだいぶ年を取って、一人前に恋をするようになった。手をつなぐとかつながないとかのかわいらしいドキドキから、もっと、密接であたたかなつながりを覚えて、安心したり焦ったりする感覚をも覚えた。
顔を見ればキスをしたくなる。
声を思い出せば胸に顔を寄せたくなる。
夜になれば抱き着きたくなるし、
朝が来ればその寝顔を誰にも見せたくなくなる。
そんな、いかにも人間的な自分に翻弄されながら、頭を抱えたり、この上なく幸福感に包まれる自分に振り回されている自分が、案外嫌いでない。
恋というのは、そういうものなのか。
恋を知った人間とは、そういうものなのか。